第16章

篠原霧音は奥歯を噛みしめ、申し訳なさでいっぱいの目を古川司真へ向けた。

何だかんだ言っても、笠原灯は奈々の実の父親だ。奈々が父親と一緒にいたいと言うなら、彼女に拒む権利はない。

古川司真は何も言わず、ただ穏やかに頷いた。相変わらず凪いだ表情で、この世のどんな出来事にも取り乱さない人みたいに。

「じゃあ、気をつけて。何かあったら電話して」

篠原霧音は小さく頷く。

「ありがとうございます、先輩。先輩も早く帰ってくださいね」

そう言い残し、彼女は背を向けて階段を上がった。

防犯扉が彼の目の前でカチリと閉まり、階段の人感センサーの灯りが段々と点いていく。

暗がりの中、古川司真の笑みは...

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