第160章 笠原灯に一つ借りを作る

二人は笠原灯の車に乗り込んだ。

篠原康人は後部座席のレザーシートに身体をべたりと沈め、我慢できないといった様子で指先で革の肌をひと撫でし、センターコンソールに鎮座する眩いロゴをこっそり盗み見た。

「お義兄さん」

篠原霧音の肩が、ぴくりと強張る。

篠原康人は後席の左右の隙間からひょいと顔を出した。泣き腫らした跡は残っているのに、目だけは妙にきらきらしている。

「この車、いくら? 乗り出しで1000万はするでしょ?」

笠原灯はハンドルを握ったまま、何も言わない。

霧音は顔だけ横に向け、鋭い視線を投げた。

康人は首をすくめ、素直に後ろへ引っ込む。

静寂が三十秒ほど続いた。

それ...

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