第26章

篠原霧音は目を鋭く細めたが、まだ何も言わない。

その代わり、腕の中の小さな子が先に動いた。

くるりと勢いよく振り返り、さっきまで篠原霧音にへらへら笑っていた顔を、きゅっと固くする。

幼いくせに眉を寄せる仕草は、入口に立つあの男にどこか似ていた。七、八分は同じだ。

生まれつきの品と威圧感。

それだけで、曽我美蘭の口から吐き出されていた下品な罵りが、喉の奥で強引に止まった。

「なんでそんな言い方するの、霧音おばさんに」

子どもの声はまだ幼い。なのに、ひやりと冷たい刃が混じる。

「おまえ、悪い女だ!」

「このクソガキ……誰の前で口きいてんのよ!」

曽我美蘭は顔を真っ赤にして噛み...

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