第34章

笠原灯が出ていったあと、リビングには死んだみたいな静けさが落ちた。残っているのは、篠原霧音の荒い息だけ。がらんとした部屋に、その音がやけに刺さる。

寝室から出てきた江口青は、霧音の姿を見た瞬間、言葉を失った。

ニットは引き裂かれ、ボタンが二つ消えている。手首には、ひとまわりくっきりと青紫。さっき笠原灯に掴まれた痕だ。髪は乱れて肩に散り、目だけがどこか空っぽで、焦点が合っていなかった。

「霧音……」

青の声が震える。半分上げた手が、宙で小刻みに揺れた。

「ごめん。全部、私のせい。私があいつを煽らなきゃ……あのクズが、本当にお前に手を出すなんて思わなかった」

霧音はゆっくり顔を向けた...

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