第35章

奈々の小さな手はふにゃりと柔らかく、篠原霧音の首に回されている。

霧音は娘の薄い肩に顔をうずめた。そこから力を吸い上げるみたいに。

奈々がまた眠りに落ちると、脳裏に浮かんだのは笠原灯の――すべてを掌握したつもりでいる、あの顔。

自分が引けばいい。何も要らないと言えば、笠原灯は放してくれる。

そう思っていた。

甘かった。

笠原灯みたいな人間は、支配することに慣れきっている。

自分で捨てたものだって、本人が「いい」と言わない限り、誰も触れない。触れさせない。

ましてや、その「もの」が勝手に逃げるなんて、許すわけがない。

霧音は立ち上がり、窓辺へ歩いた。

奈々にもらった温度が、...

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