第38章

篠原霧音ははっと顔を上げた。

少し先の街灯の下に、小さな影が二つ――。

今野安哉が、黒いジャケットを格好つけて羽織り、奈々の手を引いて立っていた。奈々はもう片方の手に、溶けかけのソフトクリームを半分。口のまわりにはチョコがぐるりとついていて、大きな瞳をぱちぱちさせながら、何も分かっていない顔で霧音を見つめている。

その瞬間。

世界が、止まったみたいだった。

頭の中で張りつめきっていた糸が、ぷつんと切れる。

どうやって立ち上がったのかも分からない。膝に走る鋭い痛みも構わず、霧音は勢いのまま駆けだした。

「ママ……」

奈々が状況を飲み込むより早く、霧音はその手首を掴み上げた。

...

ログインして続きを読む