第41章

清水月はたしかに「何もなかった」と言っていた。なのに――まさか。

「……彼女……」

笠原灯は口を開くものの、喉がからからに乾いて声が出ない。胸の奥にじわりと恐怖が滲む。

「彼女が……どうした?」

「今さら聞くのか?」

古川司真は、笠原灯の顔をかすめた一瞬の戸惑いを見て、腹の底の苛立ちを押し込められなかった。

昨日、もし自分がたまたまこの近くにいなかったら。

あのとき、篠原霧音がどれほど追い詰められていたか――想像するだけで胃の奥が冷える。

それなのに、この男は。

折り返しの電話ひとつ、寄こしもしない。

「笠原灯。お前に聞く資格はない」

古川司真は冷ややかに言い放つ。いつ...

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