第66章

篠原霧音はまだ知らない。笠原灯が「外祖母さんの入院」という口実を使って、これから彼女と会う回数を増やすつもりだなんて。

家に戻ると、奈々の寝室には、昏い小さなブラケットライトが一つだけ灯っていた。

奈々はぐっすり眠っている。赤みの差した頬はぷにっと柔らかそうで、布団は蹴飛ばされて背中のほうへ追いやられていた。

篠原霧音は足音を殺して近づき、布団をそっと引き上げる。角をきちんと押し込んだ、その瞬間――ベッドの小さな人影の睫毛がふるりと震えて、目を開けた。

「ママ……?」

奈々は目をこすり、ふにゃりと甘い声で言う。

「どこ行ってたの?」

子どもに嘘はつきたくなくて、篠原霧音はベッド...

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