第75章

篠原霧音は膝に抱えたポップコーンのバケツを見下ろし、それから目の前で平然としている笠原灯を見上げた。

こめかみが、どくん、と強く脈打つ。胸の奥から、押さえつけようのない馬鹿馬鹿しさがせり上がってきた。

「笠原灯、あんた病気なの?」

前は、帰ってきて一緒にご飯を食べてほしいと頼んでも、見向きもしなかったくせに。

今さら人を閉じ込めて、映画鑑賞?

――何それ。

笠原灯は返事もしない。まぶたすら上げず、リモコンを手に取って再生ボタンを押した。

リビングの遮光カーテンは、最初から隙間なく閉め切られている。点いているのは、暖色のフロアライトが二つだけ。

映画の音が立ち上がると、部屋の明...

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