第80章

笠原灯の姿を見つけるなり、古川司真は何も言わずに彼を押しのけ、土足の勢いで中へ踏み込んだ。

「篠原霧音!」

不意を突かれた笠原灯はよろめき、一歩たたらを踏む。次の瞬間、顔色がどす黒く沈み、今にも雫が落ちそうなほど険しくなった。

「古川司真。住居侵入だぞ。何のつもりだ?」

そのまま肩を掴もうと手を伸ばす。

古川司真は身をひねってかわし、視線をリビングに走らせた。最後に、篠原霧音の姿でぴたりと止まる。

霧音が無事だと確認した途端、強張っていた肩がわずかに緩んだ。数歩で距離を詰め、彼女を上から下まで確かめるように見つめる。

「……大丈夫か」

篠原霧音は首を横に振り、ソファに置いてあ...

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