第81章

古川司真は言葉を切り、声の調子をいくらか落とした。

「ここ数日、君と奈々がここにいるのは危ない。よかったら俺のところに――」

「大丈夫です」

篠原霧音の返事は早かった。ほとんど反射的な拒絶。

口にした瞬間、空気が一拍、硬くなる。

霧音は唇をきゅっと結び、自分の反応が強すぎたと気づいて言い繕った。

「……というか、迷惑をかけたくないんです。この家、セキュリティもしっかりしてますし。それに、数日したら奈々を連れて旅行に出るつもりなので。平気です」

古川司真は、彼女の全身から滲む警戒を見て、瞳の奥にかすかな陰りを落とした。けれどそれはすぐ、穏やかな笑みに塗り替えられる。

「分かった...

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