第82章

翌朝。

空が白みはじめたころ、篠原霧音は目を覚ました。――というより、昨夜はほとんど眠れていない。

音を立てないようにベッドを抜け、洗面を済ませ、服を着替える。

鏡の中の女は目の下に薄い影を落としていたが、その瞳だけは妙に揺らがなかった。

奈々を起こし、身支度を整えてやる。

奈々は眠たげに目をこすり、ふにゃりとした声で言った。

「ママ……」

霧音は小さくうなずき、娘の頭を撫でる。

「奈々、学校行こうね」

小学校の門前は、登校のピークでざわついていた。

霧音はしゃがみ込み、奈々の襟元を直す。両手で幼い肩をそっと支え、これまで見せたことのないほど真剣な顔をした。

「奈々。マ...

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