第85章

古城の空はすっかり落ちて、路地にはくすんだ街灯が数本、頼りなく灯っているだけだった。

「ママ……悪いおじさんに追いかけられてるの?」

奈々は声を潜め、小さな手で篠原霧音の指をきゅっと握りしめる。

「うん。奈々、急ごう。絶対に捕まっちゃだめ」

篠原霧音は腰を落として奈々を抱き上げ、片手でスーツケースを提げたまま足を速めた。

笠原灯のやり方は、嫌というほど知っている。

切符を買う。カードで支払う。たったそれだけで、十分もしないうちに居場所を突き止められる。

ゴミ箱の横で、霧音は足を止めた。

スマホを取り出し、爪でSIMを引き抜くと、いちばん底へ放り込む。

笠原灯は電話番号から追...

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