第89章

唇に残る熱が、やけどしそうなくらい熱かった。

篠原霧音は一瞬、頭の中が真っ白になる。目の前の男を力いっぱい突き放そうとした。

けれど、男の力は桁違いで、びくともしない。

まるで唇同士が溶接でもされたみたいに、どれだけ身をよじっても離れない。

笠原灯は狂ったように彼女の口内を奪い、貪る。瞳の奥に、執着と陶酔がぬらりと光った。

篠原霧音はとうとう抵抗をやめ、唇をずらして吐き捨てるように言った。

「……降参」

笠原灯は動かない。欲の色を滲ませ、荒い息のまま霧音を見下ろしている。

「出て。私、シャワー浴びる」篠原霧音は声を張った。「ちゃんとベッドで寝るから」

張りつめていた笠原灯の...

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