第91章

笠原灯は、その場で硬直した。

古川司真の腕の中にいる奈々を見つめる。心臓を、重いハンマーで叩きつけられたみたいだった。

二秒後、笠原灯は深く息を吐き、前へ一歩踏み出す。

古川司真が眉をひそめ、警戒するように彼を見た。

けれど笠原灯は、その視線など意に介さない。奈々と目線の高さを合わせ、そっと手を差し出した。

「奈々、いい子だ」

掠れた声で、無理やり優しい笑みを作る。

「パパが遊園地に連れてってやる。前から行きたいって言ってたとこだろ。今日は貸し切りにして、一日中いっしょに遊ぼう」

――昔の奈々は、遊園地がいちばんの楽しみだった。

二年前の誕生日。奈々は彼の脚にしがみつき、メ...

ログインして続きを読む