第93章

夕暮れどき。

都心の総合病院、特別個室のドアが押し開けられた。

廊下の白い蛍光灯が隙間から差し込み、床に長い影を引く。

笠原灯は中へ入り、背中で静かにドアを閉めた。

病室はしんと静まり返っている。枕元の機器が、単調にピッ、ピッ、と時を刻むだけ。

清水恵はベッドの背もたれを起こし、柔らかな枕に身を預けていた。顔色は紙みたいに白く、血の気がない。

灯の姿を認めた瞬間、恵のくすんだ表情に、ほんの少しだけ生気が戻る。

「……来てくれたのね」

声はかすれて、ひどく弱々しい。

灯はベッド脇まで歩き、椅子に腰を下ろした。全身から、強い疲労が滲み出ている。

小さく頷いただけで、表情は動か...

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