第97章

篠原霧音はベッド脇に立ち、湯気の立つ白粥の椀を手にしていた。

「鍋に残ってたの、これだけ」椀を置き、抑揚のない声で言う。「食べたら薬、飲んで」

笠原灯は体を支えながら起き上がった。

高熱のせいで、全身に力が入らない。

椀に手を伸ばす。指先が器の熱い肌に触れた瞬間、手首が勝手にびくりと震えた。磁器の椀が傾き、床へ落ちかける。

篠原霧音が素早く椀の縁を押さえた。

二人の指が、一瞬だけ触れる。

笠原灯の手の甲は怖いほど熱い。対して篠原霧音の指先は、ひどく冷たかった。

笠原灯は反射的に彼女の手を握ろうとしたが、篠原霧音はすでにするりと引き抜き、半歩下がっている。

「茶碗ひとつ、まと...

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