第100章

二谷夜子は信じられないものを見るように、藤原右京を見上げた。

いつだって理性的で冷静なこの男が――欲望に呑まれる瞬間なんて、あるはずがないと思っていたのに。

藤原右京は夜子の前でふっと目を伏せ、額をそっと彼女の額に重ねた。

普段は冷たく研ぎ澄まされた横顔が、情欲に染まって妙に艶めいて見える。

『……いい?』

ぎゅっと手を握られ、掠れた声が落ちてくる。懇願にも似た温度。

そんな優しさと強引さを同時に向けられて、夜子が耐えられるはずがなかった。

彼女は顎を上げ、答えの代わりに自分から唇を重ねる。

――もちろん。

あなたのしたいように、全部。

上着は半分ほどずり落ち、きめ細かな...

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