第102章

『先に身支度しておいで』

藤原右京がそう低く言い聞かせると、踵を返して階下へ降り、玄関のドアを開けに向かった。

二谷夜子はその背中を見送りながら、心配したところでどうにもならない、と自分に言い聞かせる。ごろごろとキャリーケースを引き、部屋へ入った。

右京はモニターに目をやる。映っていたのは藤原月美だった。彼はため息もつかず、鍵を外して扉を開ける。

『姉さん』

月美は怒りを孕んだ目で右京を射抜いたまま、何も言わずに彼の横をすり抜け、家の中へ入っていく。

右京は玄関扉を閉め、リビングへ戻った。

月美はすでにソファに腰を下ろし、静かに右京を待ち構えていた。

『何か飲む?』

穏やか...

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