第105章

江原和直の言葉を聞いた瞬間、二谷夜子の胸に湧いたのは、荒唐無稽な可笑しさだけだった。

プロポーズ?

恋人同士だった頃だって、互いに腹の内を隠したままの、ただの出来レースみたいな関係だった。そんな相手が、今さら彼女を娶りたいだなんて。

夜子は冷えた目で江原和直を見据える。

「あなた、周防家のお嬢様と婚約してるんでしょ。その結婚、あなたが『やめる』って言えばやめられるの?」

江原和直は、夜子が自分の婚約を気にしてくれているのだと都合よく受け取った。胸の奥がぱっと明るくなり、彼女の中で自分はまだ『重み』があるのだと舞い上がる。

「俺の結婚は俺が決める! 母さんにも言った。周防雨子とは結...

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