第108章

オフィスの静けさが、どこか不気味だった。

藤原右京は目だけを上げて周防充を見据え、氷みたいに冷えた声で言った。

『江原和直に婚約破棄する度胸を与えたの、二谷夜子じゃないのか?』

二谷夜子は、江原和直と周防雨子の婚約を壊すために、これまでにも散々手を打ってきた。そんな彼のほうから向こうから来たのなら、絶好の機会を逃すはずがない。

あの女――江原和直に、いったい何を差し出した?

恋情か。

それとも、身体か。

……ふざけるな。

床まで届く大きな窓の向こう、街の灯りが星屑みたいにきらめいている。

二谷夜子はベッドの上で寝返りを打った。小さな顔を夜景のほうへ向けた瞬間、光が眩し...

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