第110章

周防浩人はさすが商界の古狸だ。江原義人が何をしに来たのかなど、腹の底まで見えている。だが表情は崩さず、泰然としたまま口を開いた。

「江原さん、朝食はもう?」

「よかったら一緒にどうだい。うちの料理人の朝食、なかなか評判でね」

あまりに自然な歓待に、江原義人も突っぱねなかった。

「じゃあ、浩人さんが召し上がってるのと同じものを」

周防浩人は執事へ目配せする。

周防家の執事は恭しく一礼し、そのまま厨房へと向かった。

江原義人は回りくどい前置きを捨て、いきなり本題に切り込んだ。周防雨子と江原和直――昨夜の一件についてだ。

「浩人さん、昨日はうちのバカ息子が酔っ払って、あんなとんでも...

ログインして続きを読む