第111章

『なにしてるの?』

二谷夜子は秀眉をきゅっと寄せた。

『俺が行かせないって言ったら?』

藤原右京が身を屈め、彼女の小さな顔へぐっと距離を詰める。

いったい何があって、俺を置いていく。

朝飯すら口にせず、あんなに慌てて――。

藤原右京は、彼女にとってそんなにどうでもいい存在なのか。

呼べば来て、要らなくなれば捨てられる程度の。

二谷夜子は澄んだ瞳で、右京の端正な顔をまっすぐ見つめ返した。

そして不意に両手で彼の頬を包み、唇の端にちゅ、と軽く口づける。

『右京。ねえ、話し合お?』

藤原右京は、触れた場所を確かめるように薄い唇を結ぶ。

心はわずかに揺れた。だが表情は相変わら...

ログインして続きを読む