第122章

江原和直は、いま目の前で険しい顔をしている江原義人をちらりと見て、母の狙いを一瞬で察した。

幼い頃から父が怖かった。しかも数日前、江原義人に容赦なく殴り飛ばされたばかりだ。これ以上、火に油を注ぐ勇気などない。

『先に帰る』

それだけ言い残し、江原和直は大股で執務室を出ていった。

和直の姿が消えると、藤原月美はようやく江原義人の前へ戻る。

妻を見据える江原義人の顔は、獣じみた陰りを帯びていた。

歯を食いしばり、吐き捨てる。

『二谷夜子……!』

『また、あの女か!』

身の程知らずの女め。必ず――骨も残らないように始末してやる。

藤原月美は彼の隣に腰を下ろし、そっと手を握った。...

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