第126章

藤原右京は焦りも見せず、ひたすら辛抱強く、やわらかな眼差しで彼女を見つめていた。夜子が笑い終えるのを待っている。

どれくらい経ったのか。二谷夜子はさすがに笑い疲れたのか、ようやく口元の笑みを引っ込めた。

次の瞬間、瞳がすっと陰る。そこには、かすかな怨みすら滲んでいた。

何も言わずに踵を返し、そのまま立ち去ろうとする。

振り向いた、その一瞬だった。

藤原右京が腕を伸ばし、彼女の腕を掴むと、強引に引き寄せて胸の中へ閉じ込めた。

『放して!』

夜子は腕の中で必死にもがく。怒りで濡れた瞳が、まっすぐ右京を刺した。

けれど右京は抱き締める力を緩めない。逃がす気など最初からないみたいに。...

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