第127章

『違う』

彼女は聡明で、しかも腹が据わっている。少なくとも右京の目に、二谷夜子は決して愚かな女ではなかった。

ただ、相手が江原義人となれば話は別だ。潤沢な資本を持ち、裏社会の後ろ盾まである。今の夜子の力では、正面から張り合えるはずもない。

二谷夜子は藤原右京の言葉など信じなかった。手を上げ、ぐいぐいと目元をこすって、情けない涙を拭い去ろうとする。

目尻の皮膚が赤くなるのを見て、右京はそっと彼女の手を引きはがした。

『こら、優しくしろ。ベイビー』

どうしてそんな乱暴に、自分の繊細な肌を扱うのか。

普段、彼が少し強めにキスをするだけで、身体に痕が残るほどなのに。

『藤原右京。別れ...

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