第29章

別荘――

あれこれ買い出しを済ませ、今、二谷夜子はキッチンで今夜の夕食を丁寧に仕上げていた。

オーブンの中では、エスカルゴのブルゴーニュ風が濃厚な香りを立ちのぼらせている。

フライパンの上ではビーフウェリントンがじゅうじゅうと音を立て、表面は食欲をそそるきつね色。やわらかな肉汁は、その中にしっかり閉じ込められていた。

脇には、たった今和えたばかりのシーザーサラダ。みずみずしいレタスに黄金色のクルトン、特製ドレッシングが見事に調和している。

彼女は牛肉の焼き加減に神経を尖らせ、ときおりトングでそっと返しては、どの面も絶妙な火の通りになるよう確かめていた。

やがてナイフを取り、静かに...

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