第34章

H市国際空港、VIP動線の出口。

ひときわ存在感のある女が、ゆったりと歩み出てきた。

黒いサングラスが顔の大半を覆い、冷たい線を描く顎先と、濃艶な赤い唇だけが覗いている。

肌色に近いベージュのスーツワンピは裁ち落としが鋭く、体の曲線に寸分の隙もなく沿って、力と誘惑を同居させた輪郭を浮かび上がらせていた。

そこにあるのは「女性らしい柔らかさ」ではない。

華やかなビロードに包んだ刃物みたいな、攻撃性を孕んだ張り詰めた艶。

余裕のある足取り。全体を掌握しているかのような冷ややかさ。

一瞬で周囲の視線を吸い寄せる。

「雨子!」

鈴木撫子が弾けるような笑顔を作り、ぶんぶん手を振った。...

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