第60章

「右京……」

白原ルルの泣き混じりの声が、ようやく彼を、あの奇妙な息苦しさから引きずり戻した。

藤原右京ははっと我に返り、腕の中で目を真っ赤にした白原ルルを見下ろす。

いまの彼女は、高嶺の女神などではない。悔しさを飲み込めずに震える、か弱い女だった。

右京は眉を寄せ、値踏みするように問い返す。

「……なぜだ」

「なぜって、あなたがそれを聞くの?」

白原ルルは勢いよく顔を上げ、信じられないという目で彼を見た。

「藤原右京! どれだけ私に無関心なら、私が嫉妬してることすら気づけないの?!」

「あなたがあの女に向けてる……説明できない、あの『気にかけ方』。私が気づかないとでも思っ...

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