第70章

二谷夜子は引き戸に手を掛けたまま、ぴたりと動きを止めた。くるりと振り返ると、顔に狡猾な笑みが浮かぶ。

『私がご飯を作って、スープも煮ます。その代わり、50万ください!』

藤原右京はまだ椅子に腰を下ろす前だった。その言葉を聞いた瞬間、鋭い視線を、欲張りな女へ突き刺す。

『五つ星ホテルのシェフでも、そんな値段ふっかけねえぞ』

どこにそんな自信がある。

よくもまあ、そこまで自分を盛れるものだ。

二谷夜子は腕を組み、堂々と見返した。

『今は藤原様が私の腕を買いたいんでしょ。好きなものはお金じゃ買えないって言うじゃない。まして50万なんて、藤原様にとっては端金よ』

藤原右京が鼻で笑う。...

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