第79章

込み上げる感情を力ずくで押し殺し、二谷夜子は口の中のステーキをぐっと飲み下した。

藤原奥様に申し訳なさそうな笑みを向ける。

「おばさん、すみません……私、ちょっと電話に出てもいいですか」

逃げるように立ち上がり、夜子は足早にバルコニーへ向かった。

できる限りやわらかく、艶のある声を作る。

「もしもし」

受話口の向こうから、笑みを含んだ周防景冶の声。

「こんにちは。周防景冶です」

夜子は笑って返す。

「分かってる。周防若様、どうしたの?」

「昼は食べた?」

答えを待つ気もないのか、景冶はそのまま続けた。

「今ちょうど天野病院にいるんだ。そこの食堂の昼飯、食べてみたくてさ...

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