第80章

確かに――彼の白原ルルへの想いは、以前ほど燃え上がってはいなかった。

だが白原ルルは、結婚相手としては今なお非の打ちどころがない。

際立つ容姿。博識。申し分のない家柄。それらの条件は、藤原右京という男にあまりにもよく釣り合っていた。

藤原奥様は焦りを隠せず、半ば取り乱したように言う。

『右京、愛のない結婚なんて、長続きしないわ!』

自分も夫も、長年寄り添い、慈しみ合って生きてきた。なのに、なぜ息子はここまで恋愛に淡白で、憧れすら抱かないのか。理解できなかった。

藤原奥様の言葉を受けても、藤原右京の態度は冷えたままだった。

『母さん、もういい。俺と二谷夜子が結ばれることはない』

...

ログインして続きを読む