第84章

『……ふん』

二谷夜子は、自分の前に半膝をつく男を見下ろした。『藤原右京。あんた、私が「林原茜」を世間に晒せないって分かってるくせに……警察を呼ぶかどうか、だって? そんなの、ただの自己欺瞞でしょ!』

藤原右京の胸が、ずしりと沈んだ。

――見透かされている。

彼女が「できない」と踏んでいたのは事実だ。だが、償いたいという気持ちも……嘘じゃない。

『償う』

藤原右京は顔を上げ、涙で滲んだ彼女の瞳をまっすぐ見た。『お前が言え。できる限り、やる』

それが、彼に思いつく唯一の埋め合わせだった。

『償う?』

二谷夜子は、ようやく聞きたかった言葉を掴んだ。胸の奥がふっと緩むのに、涙は逆...

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