第87章

藤原右京は、二谷夜子が自分の失態を見て得意げにしているのを横目に捉えた瞬間――胸の奥に引っかかった小さな居心地の悪さが、闘争心に押し潰された。

平然と、言い返す。

『唾? お前の身体、俺がどこを味見してないっていうんだ』

――駄目だ。思い出すな。

あまりにも艶めいた映像が脳裏に浮かびかけて、右京はそこで思考を切った。

二谷夜子の頬が、ぱっと燃えるように赤くなる。

乱れて、いやらしくて、どうしようもない断片が、勝手にぶわっと押し寄せてきた。

この男……!

どうして、こんなに恥知らずなの!

二谷夜子は、藤原右京の突拍子もない行動がまるで読めない。

というか――目の前の男が、本...

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