第88章

音が大きすぎて、二谷夜子の耳がじんじん痛んだ。

――こいつ、頭おかしいの?! なんでそんな大声出すのよ!

叫んだ本人の藤原右京も、言った瞬間に固まった。

一日じゅう胸の奥に溜め込んでいた苛立ちが、彼女が軽々しく『野垂れ死に』なんて口にした途端、どん、と爆発したのだ。

沈黙。

リビングには、気まずさだけが薄く漂う。

二谷夜子は怯えたまま彼を見上げた。――何に怒ってるのか、さっぱりわからない。

だって、彼が頷きさえすれば、彼女は今すぐ目の前から消えて、二度と邪魔にならないのに。

なのに、頷かない。

本当に意味がわからない。こっそり逃がして、あとから適当な理由で母親を丸め込めば、...

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