第89章

藤原右京は手を伸ばし、玄関の二つの鍵を外して扉を開けた。

周防景冶が顔を上げる。そこに浮かんだのは、あまりにも「ちょうどいい」驚きの表情だった。

藤原右京は一歩外へ出ると、扉の向こうに立つ男を重たい目で見据える。

「藤原様、お久しぶりです」

周防景冶は親しげに笑った。まるで、ただの挨拶回りでもしているみたいに。

「用は?」

藤原右京の声は氷のように冷たく、顔にははっきりと「歓迎しない」と書いてある。

周防景冶の視線が、藤原の肩越しに室内へ滑る。目当ての姿が見えなかったのか、眉がわずかに寄った。

「藤原様。せっかく来たんですし、上がって座らせてくれません?」

藤原右京は無表情...

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