第92章

薄いカーテン越しの陽光が、病室の白い空気をやわらかく撫でていた。

鼻先をくすぐるのは、消毒液の淡い匂い。

二谷夜子の睫毛がかすかに震え、指先がぴくりと動く。

『藤原様、サインが必要な書類はこちらにまとめてあります……』

『例の医療トラブルの件ですが、広報が最大限に火消しを。調査の結果、騒いでいた女は――』

『手段は問わない。あの女には、最も重い刑罰を受けさせろ』

低く、磁力みたいに耳に絡みつく男の声。

聞き覚えがある。いや、ありすぎるほど。

――藤原右京?

夜子は眉をひそめ、ゆっくりと目を開けた。

痛い。

どうして、こんなにお腹が……。

『二谷夜子さんが目を覚ましまし...

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