第95章

二谷夜子は下唇の内側をぎり、と噛みしめた。舌先に、かすかな鉄の味がにじむ。

松谷雅美の泣き言は、一言一言が胸に刺さった。まるで自分の痛みみたいに。

雅美は娘の話題を口にした途端、感情が完全に決壊した。怒りと、張り裂けそうな悲しみ。

「私と藤原はね……本当に、できることは全部やったのよ。優しくも、厳しくも。最後は……最後は縁を切るって言って脅したの! 江原義人と一緒になるなら、もう私たちを親だと思うなって!」

「なのに……藤原月美、あの子は……あの子はね……親と縁を切ってでも、あの畜生と結婚するって……自分から火の中に飛び込むって……!」

松谷雅美の身体は小刻みに震えていた。

「も...

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