第96章

二谷夜子の泣き声が耳を刺す。魔音のようにまとわりついて、止む気配がない。それどころか、ますます勢いを増していく。

藤原右京の胸に燻っていた怒りは、その濁流みたいな涙にすっかり冷やされ、残ったのは苛立ちとどうしようもない徒労感だけだった。

『……もういい!』ついに折れる。『泣くな!』

二谷夜子の嗚咽が、まるで停止ボタンを押されたみたいに、ぴたりと途切れた。

真っ赤に腫れた目を上げ、怯えた子どもみたいに彼を見上げる。

『ほ……ほんと? 私のこと、怒らない? おばさん……泣かせちゃったのに……』

そのみじめな顔を見た瞬間、藤原右京の胸の奥に、ずしりとした無力感が沈んだ。

こいつは、俺...

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