第97章

藤原右京は二谷夜子を連れて、病院の庭へ出た。

歩みはゆっくりだ。夜子の身体はまだ万全じゃない。早足になれば傷に響く――そう思うと、右京は自然と速度を落としていた。

暮色が濃く沈む。

夕陽の名残が夜子の頬をやわらかく染め、きめ細かな肌をいっそう滑らかに見せる。息をのむほど、綺麗だった。

右京は彼女の細い腰を抱き寄せ、少し身を屈めて頬にキスを落とす。

『腹、減ってない?』

低く、掠れた声。

夜子は唇を尖らせた。

『とっくにお腹すいた……』

(なんでわざわざ、空腹のまま夕焼け見なきゃいけないのよ)

右京は口元だけで笑い、彼女の手を取って湖畔の東屋へ向かった。

夜が降りるころ、...

ログインして続きを読む