第7章
夜の帳が下りる頃、松原邸は不気味な静寂に包まれていた。
広大な書斎で、望は革張りのソファに座り、怒りに顔をこわばらせ、ウイスキーグラスを今にも割れんばかりに強く握りしめていた。今日のキャンパスでの屈辱が心に焼き付き、その一言一句が彼の燃え盛る怒りに油を注いでいた。
「松原さん」警備責任者の鈴木剛が部屋に入り、恭しく脇に立った。
望は鋭く顔を上げ、その瞳は危険な光を放っていた。「剛、お前は俺の下で何年働いている?」
「十二年になります」
「ならば、松原家を侮辱する者がどういう目に遭うか、知っているはずだな」望はゆっくりと立ち上がり、床から天井まである窓辺へ歩み寄った。「正人とか...
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