第8章

深夜、私のスマホが不意に震え始めた。

知らない番号だったが、どこか不吉な予感がした。

「もしもし、鈴木澄子さんでしょうか? 長谷川臨の大学の同級生です。長谷川君が入院しました。胃が出血していて、医者の話ではもう一週間もまともに食事をしていないそうです。どうあれ三年間も付き合っていた仲じゃないですか。別れたからって、そんなに薄情にならなくてもいいでしょう?」

私は窓際に立ち、夜景にきらめく灯りを眺めながら、自分でもぞっとするほど平静な声で言った。

「私には関係ありません。今後、彼のことで連絡してこないでください」

電話を切ると、私は茶室の隅へ向かい、大切にしている京都のお茶を...

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