第50章

風間怜司は車を出し、小島奈緒とお婆さんをH大の教職員住宅まで送った。

小島奈緒はお婆さんを支えながら後部座席に座らせると、風間怜司の視界に入らないところで、あらかじめ用意しておいた現金をそっと封筒へ滑り込ませた。駐車して、風間怜司がお婆さんを抱えるようにして降ろしている隙に、その封筒を助手席へぽん、と置く。

風間怜司が小島奈緒の部屋に上がるのは、お婆さんが発作を起こしたとき以来だ。あのときは切羽詰まっていて、室内を眺める余裕などなかった。

今回は入院の荷物を提げたまま、二人に付き添って階段を上がる。部屋に入った途端、お婆さんがくるりと振り返って風間怜司を見た。

「まあまあ、お客さんだ...

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