第51章

小島奈緒は、ぬるくて――濡れているのを感じた。

車の中でうとうとしていた。もともと浅い眠りだったせいか、その妙な感覚に引きずられるように目が覚める。

身体を縛りつける圧。男が彼女をシートの背に押しつけ、逃げ道を塞ぐみたいに密着していた。

目を開けた瞬間、小島奈緒は硬直した。遅れて、鼻先に馴染みのある体温の匂いが届く。

風間怜司。

彼女が起きたと察した風間怜司は、唇を離した。ほんの少し距離を取って、鼻先が鼻先を掠めるほど近いまま、ちらりと彼女を見る。

小島奈緒の匂いは、わかりやすくて、淡い。仕事柄、ほんのりコーヒーの香りが移っていて、こんな至近距離だと彼の鼻先にまとわりつく。

そ...

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