第79章

小島奈緒がお婆さんの薬をもらいに行く病院は、H大の教職員住宅からたった二駅先にある。電車でもいいし歩いてもいい。けれどバスは待ち時間が読めない。天気がよほど荒れていない限り、小島奈緒はだいたい歩いた。

正月が過ぎると、気温は日ごとにゆるやかに上がっていく。

薬を受け取り、顔なじみと軽く挨拶を交わし、リュックを背負って――足取りは自然と軽くなった。帰り道の空気は、どこか柔らかい。

行きも帰りも、頭の中にいるのは風間怜司だった。

今度こそ、もう二度と取りこぼさない。そう思う。彼のいちばん苦しい時期を、そばで支える。離れない。

山口大翔のことは、そこまで心配していない。

時間の渦の中で...

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