第94章

小島奈緒は、ふと思い出したことがあった。

小林裕美が以前、彼女に金を借りようとしたことがある。奈緒は貸さなかった。

稼ぐのは本当にきつい。小島奈緒は一円一円に神経を使って生きている。だから誰かに「お金を貸して」と言われたら、まず何に使うのかをはっきりさせる。

小林裕美の答えは、バッグのためだった。誰かから借りた金があって、いま返さなきゃいけないのだと。

聞いた瞬間、奈緒には分かった。地雷だ、と。

他人への返済のために自分から借りる。そんなことをしたら、今度はどこから奈緒に返す金を作るつもりなのか。理屈が立たない。

そもそも小島奈緒は基本的に一人で動くタイプで、小林裕美と「金を貸し...

ログインして続きを読む