第115章

泉凪紗は呆気にとられ、二の句が継げなかった。

「恩になんて着ないわ」

神代雪璃は笑みを収めた。

「いつかあいつを始末できる力がついた時も、こんなことのために手心を加えたりはしない」

その言葉を聞いて、泉凪紗の全身に鳥肌が立った。

風間翁と夢前茜の醜聞のせいで、風間家は重苦しい空気に包まれていた。使用人たちは足音を忍ばせ、息を潜めるようにして歩いている。

広間には風間家の三世代が勢揃いしており、月見優心の一家四人もそこにいた。

風間翁の高齢での火遊びを最も受け入れ難く思っていたのは月見映司だった。彼は青ざめた顔で進み出ると、問い詰めた。

「お祖父様、あなたはもう七十過ぎで...

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