第16章

その場の喧騒が、一瞬にして凍りついた。

ドアの前に、逆光を背負った長身の影が立っていた。

仕立ての良い黒のスーツを着こなし、ネクタイは締めず、シャツのボタンを二つほど無造作に開けている。その全身からは、人を寄せ付けない冷徹なオーラが放たれていた。

霧生嵐だ。

彼の視線は氷のように冷たく個室を一巡し、最後に神代雪璃の上で止まり、わずかに眉を顰めた。

その背後には、険しい表情をしたクラブの支配人、紡木祈も控えている。

先ほどまで大声で喚き散らしていた連中は静まり返り、誰もが直立不動の姿勢をとった。一人が慌てて窓を開け、淀んだ空気を入れ替える。

「……霧生嵐社長?」

木村社長の顔に...

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