第190章

それは、神代雪璃が花瓶で彼を殴りつけた件を指していた。

「そうよ! 死んでほしいくらいにね!」

神代雪璃は歯ぎしりしながらそう吐き捨てると、渾身の力で彼を突き飛ばし、素早く立ち上がった。

よろめきながら床に倒れ込んだ霧生嵐を一瞥すらせず、彼女は踵を返して螺旋階段へと走り出す。

「熱があるんだ」

霧生嵐の淡々とした声が背後から響く。それはいつもの彼に比べ、幾分か力なさを帯びていた。

神代雪璃は足を止め、振り返った。

「熱? 高いの?」

「ああ」

霧生嵐は床から上体を起こした。その単純な動作でさえ、今の彼にはひどく困難なことのように見えた。

暗闇に目が慣れてきたおかげで、神代...

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