第252章

「入れ」

霧生翁はベッドのヘッドボードに背を預けていた。点滴を受けてはいるが、その身に纏う威厳はいささかも衰えていない。

霧生光丘は冷や汗を拭いながらドアを押し開け、顔を上げることもできずに部屋へ入った。

「親父、話というのは……」

「外で何が囁かれているか、知っておろう」霧生翁は瞼すら上げずに言った。「東誠は霧生家の種ではない、とな」

光丘はビクリと体を震わせ、乾いた笑いを漏らした。

「親父、あんなものはデタラメですよ。信じないでください……」

ガシャーン!

霧生翁は手近なコップを床に叩きつけた。

「この期に及んでまだ隠し立てするか! 老いたとはいえ、まだボケてはおらん!...

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